海外文学

トンボ・針・魔女|Beautiful you/Chuck Palahniuk


総評:★★☆☆☆ 

あらすじ

ペニー・ハリガン(Penny Harrigan)はある日、

ソフトウェア開発者で億万長者のマクスウェル(C. Linus Maxwell)に、

マンハッタンで最も高級なレストランでのディナーに誘われるのだが、実はこれ、

マクスウェルが展開する性玩具「Beautiful you」の実験台としてペニーは利用されていたのだった。

シンデレラストーリー

先月読んだAdjustment dayの野心的なプロットとは打って変わって、

「Beautiful you」のプロットはなんともありきたりというか、風刺的というか。

没個性の一般女子代表ペリー・ハリガンが億万長者マクスウェルとデートにありつくという、

どこのラブコメだってくらいのシンデレラストーリーなのだ。

さらに、それが実は性玩具の実験のためだったというエロ漫画的展開。。

まあよく言えばパラニュークらしいカルトのにほひが立ち込めるB級ラブコメといったところだろうか。

パラニューク版フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ

「Beautiful you」のアイディア、発想の原点はおそらく「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」なのではないだろうか。2015年の映画版が有名だが、原作小説は2011年に出版されている。

「Beautifu you」の初版が2014年なので、原作小説の影響をもろに受けているといっても過言ではない。

本国アメリカでは「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のヒットによって、

誤った性玩具やSMプレイが横行し、それによって負傷する人がかなり増えたとのデータもあるそう。

トンボの東西

性玩具「Beautifu you」のラインで最も人気、否、感度が高いのはDragonfly-とんぼ型のデヴァイスである。

ここで面白いのは、東洋と西洋におけるトンボのイメージの違いだ。

東洋におけるトンボは、比較的縁起のよいシンボルであるとされている。

中国では、精力増強の効能があるとして、漢方薬として用いられていたそう。

日本では、素早く飛び害虫を捕食する肉食性と、前にしか飛ばない飛行形態から

不退転の「勝ち虫」、縁起物としてお武士の甲冑や紋章などに好んで用いられていたそう。

ここで日本のトンボ礼賛な土壌とは打って変わって、西洋におけるトンボのイメージは好ましくはない。

針のように見えることから「魔女の針」「悪魔の針」などという別名もあるそうだ。

この針が「言うことを聞かない子供の口を縫い付けてしまう」という教訓として機能しているというのだ。

針と魔女

パラニュークが性玩具として「トンボ」をチョイスしたのは、どちらかというとこの西洋的な、ネガティブな意味合いにおいてだろう。

もう少し調べると更におもしろかったのが、かつて魔女狩りとして用いられていたのが

「針」を使って身体への試し刺しだったというのだ。

魔女、針、トンボという共通項がじわじわとあぶられてきた。

たしかに本作において「トンボ」を使って性的充足を得る女性達は、

欲と快楽に溺れた魔女だと言うふうに見えなくもない。


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